ビート・メイキングと機材

MASCHINE
sp1200

上の動画はNATIVE INSTRUMENTSの最新型GROOVE BOX であるMASCHINEによるビート・メイキング。
下の動画は往年の名機でのビート・メイキング。EMU SP1200でAKAI S950をシーケンスしているようだ。

MASCHINEは非常に使いやすそうだ。非常に短時間で目的の作業が完了する仕組みになっているし、操作性も直感的だ。MASCHINEは実はコントローラーでオーディオ出力すらついてない。音源部分はUSBで接続したPCのCPUが担う。今の時代におけるビートメイキングとは何か?という問いかけに対する完璧な解答と言えるだろう。これはちょっと買いたくなってしまう。

一方、EMU SP1200 + AKAI S950のほうは、テンポも何もかも違うレコード・ライブラリからサンプリングしては偶然に頼ってパズルのように組み合わせ、手動でサンプルの頭を削ったりピッチを落としたりしながら試行錯誤して非常に時間をかけて作る効率の悪さ。この動画ではその試行錯誤の部分は省かれているが、そもそもレコード・ライブラリを揃えるのは時間も金もかかる。好きじゃないと出来ない世界。

MASCHINEには最初から使いやすくかっこいいサンプルが豊富に付属するようだ。

もはや、EMU SP1200 + AKAI S950といったレガシーな機材など全く価値がないのではというくらいグルーヴ・ボックスは進化したといえる。

ビート・メイキングは単純な行為だけに、誰でもすぐ出来るようになるが、実は奥が深くて結構時間がかかる。最近よく聞く一万時間の法則という言葉があるが、ビート・メイキングも長く愛され聴かれ続けるような味わいのある音が作れるようになるまでには長い時間を費やして試行錯誤する必要がある。

MASCHINE含めPCでするビート・メイキングは、締め切りに追われているような時に短時間で成果を出すには最高だが、独自のコツをつかみオリジナリティーを体得していき、最終的には唯一無二の存在を目指すといった職人的なスタイルには向いていない。効率の良い機材は簡単に使いこなせるかわりにEMU SP1200 + AKAI S950という組み合わせが持つ長所は持たない。その長所とは『時間をかけないと使いこなせないかわりにその過程で一人一人が異なるオリジナリティを獲得していく』というような部分だ。

EMU SP1200 + AKAI S950という組み合わせはひとつの例にすぎないが、この組み合わせであろうと、MPCであろうとかっこいい音を出すのは実はすごく難しい。定番の名機を買えばいいというものではない。定番の名機も、もともとはみんなから軽視されていた機材だったし本来とは違う使い方だ。狙った音を出すまでには時間がかかるが、その代わりに実験を繰り返す過程で自分だけのノウハウが得られる。

ビート・メイキングの世界もDAWをはじめとしたPC環境を導入すると、再現性の高さと効率の良さに依存してしまい、DAW登場前にMIDI機材とアナログ・レコーダーでやっていたようなレガシーな環境は敬遠されて、使われなくなっていくが、一方でオリジナリティは失われやすくなってしまう。古い機材もなるべく売ったりせずにとっておいて今の環境とバランスよく混ぜて使っていくというのもなかなか新鮮で良いのではないかと思う。

参考になるかもという記事

レイ・ハラカミさんが凄すぎる件 by half dim さん
http://halfdim.blog42.fc2.com/blog-entry-2256.html